ガーナのカカオ栽培の町 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2016年6月16日刊行
国立民族博物館HPより
旅・いろいろ地球人
フェアトレードタウン
- (2)ガーナのカカオ栽培の町 『毎日新聞(夕刊)』掲載 2016年6月16日刊行
- 鈴木紀(国立民族学博物館准教授)
ニュー・コフォリデュアの農民の家=2014年、筆者撮影フェアトレード(公正な貿易)を町ぐるみで推進しようとするフェアトレードタウンのほとんどは先進国にある。それが先進国の消費者主導の運動であるためだ。
しかし例外もある。ガーナのカカオ栽培地帯にあるニュー・コフォリデュアはその一つだ。この町の農民は、ガーナの著名なフェアトレード協同組合である「クアパ・ココ」のメンバーだ。
実はこの町は、世界初のフェアトレードタウンである英・ガースタングと姉妹都市関係にあり、主に英国からフェアトレード関係者や学生らが訪問する。町のゲストハウスには、交流の記録が保管されている。中でも美しく装丁した手書きの本が目に留まった。そこには、現在の貿易の不公正は植民地支配と奴隷貿易に由来すること、そして両町の人々が対等な立場で相互の文化を尊重する決意が綴られていた。
この交流はニュー・コフォリデュアの人々の暮らしに直接的なメリットももたらす。訪問者がしばしば支援物資を持って来るし、小規模ながら観光産業が生まれているからだ。
フェアトレードは商品取引を通じて南北格差を是正する試みだが、その究極の目的は、このような生産者と消費者との人間的な交流なのではないかと気づかされる。
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私も「生産者と消費者との人間的な交流」というところ同感です。5月28日にネパリバザーロの土屋春代さんをお招きして愛知県国際交流協会で「3・11とフェアトレード」という題でお話をしていただきました。そのときの春代さんのプロフィールには「…..2011年3月の被災後、被災地支援を続け、地域の人々と連携、その土地にある素材を活かし、椿油、コスメ、ワインなどを製品化し、それを軸に観光による交流人口増加と復興を目指す。…」とあります。「フェアトレードと観光」ガーナも、またタンザニアでも。京大の辻村英之さんも毎年、タンザニア・ルカニ村に環境客(勉強・交流目的ですが)を連れて行ってみえます。私も参加しました。静かな村の朝や子どもたちの元気さが蘇ってきます。フェアトレードの理念は広く発展して行っているように思いますが、エシカルと混同しムードで広がる懸念もあります。フェアトレードもエシカルも倫理的消費ではありますが、エシカルと同義語ではありません。以下は渡辺龍也さんの話
『フェアトレードとエシカルの違い』
「フェアトレード学」渡辺龍也著 217P~218Pより
エシカルは
・倫理的貿易イニシアチブ(ETI)の基礎的規範
は、ありますが最低限守るべき事を規定しているに過ぎない。
・企業にとってのメリットは、ETIに加盟し、労働組合やNGO のチェックを受けることで、「倫理的企業」であるとアピールできること。製品に貼るラベルはない。
一般的にエシカルの方が広い意味で使われています。エシカルトレードとフェアトレードの違い
エシカルの場合は、下請け・孫請け企業や生産現場で労働搾取が行われないようチェックするのですが、搾取しなくても済むよう下請け・孫請け企業に充分な対価を払うことまで約束していません。
片方で安く買いたたいておいて、もう片方では労働者にきちんと賃金を払えと、矛盾した要求をすることがありえる。
フェアトレードは正当な対価を払うことを約束するだけでなく、労働者の生活が改善されるようプレミアムも払っています。2011/7/5